【短編集】その玉手箱は食べれません


「うわっ!」

 水たまりの中へ落ちると思った瞬間、以前水の中へ転がした石の上に踵がのった。


 石を踏み台にして水たまりを後ろ向きに飛び越え、難を逃れた。


 ぼくの曲芸まがいの奇妙な行動を見て後藤は顔をしかめ、威圧をこめて右足を力強く踏み出した。


 水しぶきを上げておれの服を濡らそうと思ったに違いない。


 それが命取りになった。
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