【短編集】その玉手箱は食べれません
「これ、仏壇に上げて」
娘は大手デパートの紙袋をおれに渡した。包装紙を見て老舗のカステラだとわかった。
「いつから信仰心が芽生えたの?」
妻の嫌味なひと言におれは肝を冷やしたが、娘は「あら、昔からよ」と薄く笑って受け流した。
そういえば幼い頃から娘は祖父や祖母の命日がくると「お花は?」とか「お供えは?」とかさかんに気にする素振りを見せていた。
祖父や祖母にかわいがられていたせいかもしれない。