【短編集】その玉手箱は食べれません


「いま、どこにいるんだ?」


「えっ?」

 娘が上擦った声で訊き返す。電話の向こう側で首をかしげている様子が手に取るようにわかる。


「声が聞けただけでも安心したよ。じゃぁな」


「ちょっと待って、いま私がいるの……」

 おれは会話の途中で電話を切った。
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