【短編集】その玉手箱は食べれません


 店内はいたって殺風景。カウンター席とテーブル席が4つ。


 埃をかぶったジュークボックスはチェンジャーアームがレコード盤を不完全な位置に停止させたままで、溺れて必死にもがく人間の手に見えた。


 年季の入った板張りの床は歩くたびにギシギシ鳴る。


「お客さん、そんな気味の悪いもの店の中に持ってこられたら困るんだけど」

 口ひげを生やし、黒タキシード姿のバーテンらしき中年男が当然のごとく不満を口にする。


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