【短編集】その玉手箱は食べれません
カチッ、カチッと虚しい音が鳴るだけでライフルから銀の弾丸は射出されず、バーテンは苦虫を噛む。
「残念、弾切れなんだよ」
おれはコートのポケットからパラパラパラと銀製の弾を落とした。
「銀の弾丸を持たずにこの街で暮らせると思うか?」
バーテンは黒タキシードの裾を捲り、腰に巻くホルスターを見せた。
「人間ごときが勝負を挑んでくるなんてなめられたもんだ」
おれも予備として巻いているホルスターに手をかける。