【短編集】その玉手箱は食べれません
呼吸を合わせ、3……2……1とカウントダウン。
銃声が響いたのは1発だけ。
店を出たおれは筋肉を隆起させ、ガルルッと唸るとコートを引き裂き、赤褐色の体毛をさらけ出す。顎が伸びて醜い乱杭歯から粘りのある涎を滴り落とした。
遠吠えをして満月に勝利を告げる。
おれの名はシルバー・ブレッド。
仲間から恐れられる名前をわざとつけ、孤独をこよなく愛する一匹狼……いや一匹の狼男。
<了>
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