【短編集】その玉手箱は食べれません
「彼は正樹って言うんだが、親戚に同じくらいの小学生の男の子がいて父親の趣味である川釣りに付いて行ったそうなんだ。その男の子は使い捨てのカメラでパシャパシャと手当たりしだいに風景を撮って遊んでいた。数日後に現像された写真を見るとその中の一枚にとんでもないものが写っていたんだ」
「なにが写っていたんですか?」
「100メートルほど下流の橋の上から4、5歳くらいの子供を落とそうとしている男の後ろ姿が写っていたらしい」
「マスターはその写真を見てないんですか?」
“らしい”と語尾につけたのでウエイトレスはやや断定して尋ねた。