【短編集】その玉手箱は食べれません
おれの存在をもっと世に知らしめないといけない。行動は早いほうがいい。
ある日のこと、ひと際大きくてガラス張りのビルに黒塗りの車が滑り込んできた。
厳つい顔の男が車を降りると、スーツのボタンがはち切れそうなくらい胸板の厚い筋肉質の男達がガッチリ脇を固める。
そのときのおれは敵のいなくなった平穏な生活に飽き飽きしていたのかもしれない。この街で天下を取れるという欲も湧いた。