【短編集】その玉手箱は食べれません
おれの亡骸が転がっていても誰も気づきやしないだろう。
ここでじっとしていると人間の裏の部分やうわべだけの会話を聞けて楽しかった。おれの死に場所にふさわしい。
いきがって生きてきたツケが回ってきたのだろうか?
最期に惨めに死んでいくのは世の常なのだろうか?
反省の思いが駆け巡ってくるなんておかしくて笑いそうになった。
おれは少しでも楽になろうと体を横にした。90度に傾いて目に映った景色が徐々に白濁していく。
もう終わりか……そう思ったとき、重力が喪失して体が浮いた。こんなおれを天国まで運んでくれるのか?……俄かに信じられなかった。