【短編集】その玉手箱は食べれません


「見てないよ」


「みんな信じたんですか?」


「ちょうどそのとき、小さい子供が行方不明になる事件があったからみんな怖がったよ」


「怖い、怖い」と言いながらウエイトレスは楽しそうだ。


「現像したカメラ屋は気づかなかったのか?家族の反応は?その写真を警察に持って行かなかったのか?落としたのは人形じゃないのか?など、いま考えるとツッコミどころ満載だけどね。あのときは恐怖心だけが頭の中を支配して疑うなんてことはしなかった」


「かわいい」

 ウエイトレスは幼い頃のマスターを想像して茶化した。

 きっと怖くて写真を見れなかったのだ。
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