【短編集】その玉手箱は食べれません
これまでにも貧乏な絵描きはお金を節約するために材料を周辺の森から調達して自分で筆を作っていました。
悲しいことに彼は腕の良い筆職人であることを自覚していませんでした。
筆が完成したちょうどそのとき、日頃から口うるさくなんでもいちゃもんをつけてくる隣人が、変な臭いがするぞと大声で怒鳴りながらドアをノックしてきました。
絵描きは大変焦りました。もし家の中を見られたら妻を殺したと勘違いされるだけでなく、妻と永遠の別れになってしまうと思ったからです。