最低彼氏にはさよならがお似合い
「相川さん、おはようございます」
「あ、」
また忘れてた、高橋のせいで。
聞こえてきた声の方を向けば、いつもよりどこか疲れている相川さん。
「相川さん」
「おー櫻井おはよ」
「……死にそうですね」
「昨日は本気で三途の川の端を見た、当分お前と飲みたくないわ」
「え、付き合ってくださいよ。たまには」
「嫌だね、他のやつ誘え」
「そんなに具合悪いですか?」
「大丈夫仕事はできるから」
相川さんがどことなくいつもより頼りなさげに見えて、今度は素面でノンアルの飲み会にしておこうかなと思いを巡らせた。
「無理はしないでくださいね」
「わーってるって。櫻井も溜め込むなよ」
ぽんぽん、頭を撫でられたから小さく頷いてデスクに戻った。
なんだかんだ、面倒見のいい先輩なんだ。
あれだけ疲れきっていた相川さんだけど、流石というべきか。
仕事が始まったらいつものように、動き出した。私も人のことに気を配ってばかりもいられない。
「高橋、この前のCMのラフ画は?」
「部長が、他に任せてみたい人がいるって言ってたので、丸々部長に渡したんですけど、聞いてませんか?」
「……なんだそれ、初耳」
そんな切羽詰まってやるほど期限は近くないけれど、今夏販売予定の商品だからそろそろCMの構想を、と考えていたのに。
妙に嫌な予感がして近づきたくないけれど仕事だし、と勢いで部長室を開けた。
「夏帆ちゃん、ナイスタイミング」