最低彼氏にはさよならがお似合い
「仕事なら喜んでお受けします」
「そう言ってくれると思ったよ。水瀬くんの机は夏帆ちゃんの横の書類が散乱してるところを片付けて使ってもらえるかな」
「わかりました、よろしく櫻井」
「、よろしく。水瀬」
その時、きょう初めて目を合わせたけれどすっかり仕事モードなそれに、私も気を引き締め直した。
部長室を出てとりあえずデスクへ戻る。
「さっき、概要は読んだけどもっと細かい話は出てないのか?」
「これから、詰めるつもりだったけど私のなかでイメージはある」
「どんな?」
「今回の商品は、」
「櫻井。水瀬、」
いいところで遮られ、眉間にシワを寄せたまま振り向く。
「いや、お前らわざわざ同じ顔しなくていいって。」
相川さんの言葉に水瀬を見上げれば、あっちも私を見ていて、お互いに睨んで
「真似しないで」
「真似するな」
重なった言葉にさらに言葉を告げようと口を開きかけたとき
「あーはいはい、仲良いのはよくわかったから、会議室で話詰めてこいよ。どうせお前らまた散らかすんだろ」
相川さんにはステラの作業風景も知られているから、素直に頷くと必要な書類とパソコンを持って空いている会議室に入った。
「で、さっきの続きだけど折角発売が夏なんだから季節に絡めて、星座とか星の名前をつけて見ようかと思ってたの」
「聞いたことはあるけど使われることはない名前がいいよな。神話も使うか」
「うん、ネックレスを天の川にでも見立てようかなって」
「ふーん、まあ悪くない」
「水瀬は?なに考えた?」
「花火を題材にいつまでも存在感を残して感動させてくれるものってことで」
その後も尽きることなく意見を交換し、取捨選択をしていく。
「よし、こんなところか」
満足げな声にそっと顔を上げれば、仕事モードOFFになった水瀬。
この男はスイッチが本当についているんじゃないかくらい、明確に切り替わる。