最低彼氏にはさよならがお似合い


「夏帆、飯食いに行こ」

「他の人誘って」

「俺は夏帆とが良いって言ってるんだけど」

「……お疲れ様」


片付けを手早く済ませ、水瀬のことは見ずに早々にその場をあとにする。



「夏帆」

廊下を歩いていても尚しつこいこの男に、潔く振り向いたのは企画化の入り口。


「名前で呼ばないで、ここ職場」

無表情を心掛けて、極力感情を声にのせないようにする。


「夏帆」

懲りないこの男にため息をはきたいのをこらえ、若干声が低くなるのは仕方ない。


「……水瀬、話を聞け」

「一緒にランチ行こう」

頷いてくれるまで、名前を呼び続けるから。耳元で囁かれた変な脅しにため息しかでない、



何を言おうか、考えていたとき
企画課のドアが開いて高橋が顔を出した。

「あ!夏帆さん、仕事落ち着きました?」

「一応ね」

「じゃあ行きましょ」

「どこに?」

「酷いな、忘れちゃったんですか?」

本気で考え始めた私に不貞腐れる高橋。
大の大人がやっても可愛くないと言いたいところだけど、童顔の高橋は可愛いらしく見えるから恐ろしい。


「あ、そうだね。約束してたね」

これを天の助けとでも謂うのか、ほっとして高橋の横を準備してくると言って、すり抜ける。



視界の片隅で高橋に話しかける水瀬に本日2度目の嫌な予感しかしない。


資料を置いて、財布を手に取るとぐるりとあたりを見渡した。

他の人たちは大半がすでにランチに行っているようで席はガラガラ、でもやっぱり探し人はパソコンに向かって難しい顔をしていた。


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