最低彼氏にはさよならがお似合い
「高橋、ごめん遅くなった。相川さんこっちの世界に連れ戻してたら、ね」
当然無視して高橋のみを視界に入れる。
「早く行かないと時間内に戻ってこれないけど、どこいくつもり?」
相川さんの声に私も聞いていなかったと、高橋を見遣る。
「高橋どこ行こうとしてたの?」
「えーっと……」
目をキョロキョロさせて曖昧に笑う高橋を不審に見ていれば、何かを察したらしい相川さんと水瀬は不敵に笑った。
「分かった高橋、悪かったな。
てことで、社食でいいか」
「別にいいですけど、それならこんなぞろぞろ居なくてもよかったですね」
私がそういえば、何故か満足げに水瀬は笑みを浮かべ、相川さんには頭を撫でられた。
ちなみに高橋は前を歩いている。
「泣くなよ、高橋」
性悪な水瀬は、言葉と裏腹に楽しげな声で。
「言葉と表情があってないぞ、水瀬」
「気のせいですよ」
相川さんの指摘にも ゆるり、例の爽やかな笑顔が黒くなってきた気がする。
日本に戻ってきてから、以前のような爽やかさが影を潜め始めて、それが良いか悪いかは知らないけれど。
「……夏帆さん」
「ん?なに」
「これはノーカウントでお願いします」
「え?あー、そうね。」
「今度はいつがいいですか」
「ランチならいつでも」
「じゃあ、」
「櫻井、なに食べる」
高橋の言葉を遮る相川さん。
「高橋、俺も誘えよ」
それをも遮ろうとする水瀬。
なんだこいつら、あきれて笑えば不思議そうな顔をされた。高橋には。
他の二人は言わずもがな。