最低彼氏にはさよならがお似合い
「ん」
き、っと睨み付ける勢いで顔をあげれば奴は視線を反らさずただ私を見ていた。
この男が弱さをさらけ出した、余裕綽々で飄々とした顔が剥がれたところをみてみたい。
私の前でその顔を見せてくれたなら、何かが変わる気がする。
この日私は密かに決心した。だから
「水瀬、知りたいことがある」
「なに?かほ」
甘く優しく笑う水瀬に、そんな笑顔にほだされはしない。
「条件をクリアしてから、それから考える」
「条件?なに」
「秘密」
「それじゃあクリアの仕様がないだろ?」
「さあ?できるんじゃない、やろうと思えば」
考え込んだ水瀬は、目線を下げ一点を見続ける。
「夏帆」
しばらく黙り込んだ水瀬が顔をあげる。
その目はなにかを決意した強い光を放っていた。
「いいよ、その条件クリアして絶対に夏帆を頷かせる」
そこでようやく本来の爽やか全開、みる人が見れば胡散臭くもあるその笑みを浮かべた。
なんでそんなに自信があるのか、いやそもそもそれが水瀬だった。
むしろさっきまでの弱気で下手に出るのがおかしかったんだ。
そう納得すると、運ばれてくるカルボナーラを食べ始めた。
「あ、美味しい」
「だろ」
無意識にこぼれた感想に水瀬は満足げに頷いて、自分もペペロンチーノを食べ始めた。