最低彼氏にはさよならがお似合い


「どう、お嬢さん俺に誘拐される気ない?」


「警察って110よね」

「夏帆~」

すがるように名前を呼ばれたって、犯罪者予備軍にはそれ相応の対策をとらないとね。

「冗談だから、夏帆。

…………………………なんでそんな嬉しそうなの」

「え?水瀬が強制的に大人しくしてくれるからに決まってるじゃない」

「え、夏帆。なにいってるの」

ふっ、と鼻で笑った私に突き刺さる鋭い白い目。

それから然り気無く視線を反らせば、視界に入った私の居城。

タイミングばっちり、心の中でそのタイミングのよさに拍手を送り、心からの満面の笑みを水瀬に向けた。


「あ、着いた。送ってくれてありがとう。またあした」

「待て待て」

車のドアを開けたのに、右腕を掴まれる。


「なに、お礼にお茶でもなんて言わないわよ」

「言えよ」

「いーや、早く帰りなよ」

「夏帆、ちょっとは流されろよ」

「ご飯行ったでしょ。お疲れさま」


水瀬の力が緩んだ隙に、車を降りてドアを閉めた。

手を振って見送れば、ようやく去っていった。
なんだか、ものすごく疲れた。

早くお風呂入って寝よう。



< 29 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop