最低彼氏にはさよならがお似合い


「あ!水瀬さん」

その声を聞き留めたらしく、こっちを見て少し笑ってやつは片手をあげた。

それに反応を返さないことにして、焼酎を注ぐと同時に自然と視線を外したけど。


「相変わらず、水瀬はモテるね」

それをあなたが言いますか、相川さん。

「いいんですか、平野さんほっといて」

「ん?彼女、水瀬と知り合いっぽいから。ほら」

指差す先を見れば、僅かに潜まった喧騒の中、対称的な表情を浮かべる二人がいた。


困惑の水瀬と喜色満面の平野さん。
けれども、抱きつく平野さんを引き剥がさないところからして、結構仲がいいんだろう。

水瀬はいつもなら、同僚や後輩相手には 然り気無く、相手に不信感や嫌な思いをさせないように振り払うから。

「……元カノ、とか」

意味深に、どこか愉しそうに笑みを含んでぽつりと呟いた、相川さんの声を拾った肉食系女性陣が、飛びついてきた。


「やっぱり、そういう関係なのかしらね」

「えーでも、水瀬さん好きな人いるって言ってましたよー?」

「もしかしたらそれが平野さんなのかもね」

「別れたけど忘れられないってやつですか!」

「水瀬さんそういうタイプに見えないけどなあ」

「甘いわね、ああいう男の方が実は素が甘えただったりするんだから」

「先輩もそういう人と付き合ったことあるんですかー?」

「そんなこともあったわねぇ」

「……」

そのマシンガントークに、なぜか混ざった相川さんにため息をはき、徳利をあおった。



「櫻井、」


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