最低彼氏にはさよならがお似合い



視界の端に映る水瀬から視線を反らし、残りの仕事を片付ける。

珈琲のおかげか決意のおかげか、集中力が戻ってきて予定していた時間もかからずに仕事が一段落した。


時計を確認すれば、まもなく23時。
これ以上残ると終電を逃す。

パソコンをシャットダウンしながら、机の上を片付け、鞄を手に立ち上がる。

水瀬はまだ帰れないらしく、パソコンのキーを叩く音が絶え間なく聞こえる。


「水瀬、お疲れ様。最後よろしく」

「ああ、気をつけて帰れよ」

上の空の返事に苦笑して、エレベーターへ向かう。

誰もいない夜のオフィスは独特の雰囲気に包まれ、なんとなくテンションが上がった。

誰もいない受付を抜け、社員証をかざしてちょっとした休憩室になっている一角の横を通りすぎようとした時だった


「おー、タイミングぴったり」

誰もいないと思っていたのに、ソファから声がする。
真っ暗なそこは、辛うじて人の姿は見えるも顔まで判断することはできない。


「お疲れ、片付いたのか」

聞き慣れた声が近づいてきて、ようやく息をはく。


「相川さん、まだいたんですか」

まさか、定時退社した相川さんがいるとは思わず、驚きがそのまま言葉に出てしまう。



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