最低彼氏にはさよならがお似合い
「いや、さっき来たとこ」
「なんで、?」
「三国たちと飲んだ帰り」
私の質問に答えた様で答えてないその返事に、首をかしげれば何故か顔をしかめられた。
「櫻井がさ、珍しく残業だっていうからわざわざ迎えに来てやったわけですよ」
そう言って、1歩近づいてくる相川さんからは確かに若干アルコールの匂いがした。
「恩着せがましいですけど、ありがとうございます」
私の言葉なんて聞こえていないかのように、相川さんは言葉を続ける
「まあ、それだけじゃなくてさ」
相川さんはさらに1歩近づいてくると、私の顔を覗き込みながら呟いた。
「……水瀬とふたりきりって聞いて、ね」
………それは、いったいどういう意味で受けとればいいのだろう。
深夜の仕事で疲れた頭は考えることを放棄したようでなにも浮かんでくれない。
だからただ、ゆっくり瞬きしながら相川さんを見つめ返した。
相川さんもまた表情を変えることなく、口を開いた。
「なにか、あった?」
その聞き方はずるいと思う。
ここでないと言えば、そっかと頷いてくれるだろうし、あったと言ってもたぶん同じ返事が返ってくる。
相川さんは無理矢理には聞いてこない。