最低彼氏にはさよならがお似合い
「相川さん、珈琲のおかわり要りますか?」
食器を洗い終え、自分の珈琲を淹れながら尋ねるも返事がなくて、相川さんのソファに近寄る。
上から覗き込めば、横になって寝息をたてていた。
床にしゃがんで、前髪を目元から払い何か掛けるものをと立ち上がりかけた
その瞬間、腕をつかまれ後ろに引っ張られる。
相川さんに後ろから抱き締められたまま、ソファの上に寝転がる。
これはもしや
「寝たふりしてたんですか」
「いや、半分本気で寝てた。」
言いながら欠伸が聞こえるからたぶん嘘じゃない。
「疲れてるなら寝てください、倒れられても困る」
「んー、」
聞いてるのか怪しい返事をしながら、再び欠伸をする相川さん。
「でもねー」
するりと、服の裾から入ってきた手に意識せずとも声がこぼれる。
「夏帆がいたら、抱きたくなっちゃうんだよね」
いつのまにか、天井を背にした相川さんは妖しく笑う。
「……せめて、ベッドにして」
「誘ってる?やーん、夏帆ちゃん大胆」
「はあ!?」
「うそうそ、そんな怒るなって」
けらけら笑って私を抱き上げると、額にキスを落としてベッドに下ろした。
「あいかわさっ……っ」
名前を呼び終えるのを待たずに降ってくるキス。
「夏帆さあ、そろそろ名前で呼んでくれてもよくない?」
キスの合間に器用に囁かれる。
返事に困っていれば、相川さんはにやりと悪戯な笑みを見せて
「言えるまでお仕置き」
それはそれは愉しそうに笑うのだった。