最低彼氏にはさよならがお似合い
「部長!お疲れ様です」
誰かのその声にはっと、顔を向ける。
大分崩れたその光景に、眩しげに目を細めながら入ってきた部長に、近くの人がビールジョッキを差し出し、今日何度目とも知れない乾杯をする。
一旦落ち着いたところで部長が再び立ち上がり、声をあげた。
「みんな、盛り上がってるところちょっといいかな」
部長の声にすぐさま静まり返る。
流石部長、流石みんな。
「実は、年明けから異動してくる人がいてね。今日顔合わせってことで来てもらったんだよ」
ざわざわ。さざ波のごときざわめきが広まる。
「じゃあ、とりあえず挨拶だけしてね」
襖の影から姿を表したその姿にいますぐ気を失って夢だったとならないかなと本気で思う。
「アメリカ支所で春の微笑みとのコラボ商品を担当していました。2年前までは本社にいました、水瀬智一です。改めてよろしくお願いします」
2年たっても変わらぬその爽やかな笑みに大人の色気なるものを増して、その男は頭を下げる。
2年前まではずっと本社勤務だったこともあり、ほとんどの人が水瀬を知っている。
すぐさま、人の群れにのまれ、四方八方から言葉をかけられていた。
「先輩!先輩!水瀬さんってすごい格好いいですね」
興奮している柚花ちゃんに、苦笑しか返せない。
「そうね、かなりモテてたわね」
「彼女いないんですかねー?」
「……、さあ」
返事に詰まった私を気にすることなく、柚花ちゃんは水瀬を取り囲む人波に突っ込んでいった。
むしろ、揚げ足をとってくるのは、