最低彼氏にはさよならがお似合い
「強がっちゃって」
「別に強がった訳じゃないですよ」
手持ち無沙汰になって、ぐいっと手近のグラスをあおる。
そんな私を面白そうに見てくる相川さん
だけど、親切にもビールを注いでくれる。
「やけ酒、って言わないの?これは」
「……喉が渇くだけです」
1度、水瀬に視線を遣るも楽しんでいるし、私のことなんて気にする素振りもないし。
あの男が表情を変えることはないと知ってはいるけど。
自分でもわかっているが、不貞腐れてジョッキをあおる。
呆れたようにため息をはいた相川さんが、ぽんぽん頭を撫でるから涙腺が緩む。
そのうえ、再びジョッキにはビールを注いでくれる。
「まだ俺も死にたくないからね」
「……御手洗い、行ってきます」
立って歩き出せば、思っていた以上のアルコールを摂取していたらしく、視界が歪み、足元も覚束ない。
ひんやり、した水に浸した手を額に当てれば、若干意識がはっきりする。
流石に若い頃みたいな体力はないから二次会には出れないな。
そう思い直して、御手洗いを出て、すぐ近くの壁に寄りかかる。
風が通り抜けるから、火照った肌にちょうどいい。
「……こんなとこで寝るなよ」
これは幻聴。