最低彼氏にはさよならがお似合い


「強がっちゃって」

「別に強がった訳じゃないですよ」

手持ち無沙汰になって、ぐいっと手近のグラスをあおる。



そんな私を面白そうに見てくる相川さん
だけど、親切にもビールを注いでくれる。


「やけ酒、って言わないの?これは」

「……喉が渇くだけです」


1度、水瀬に視線を遣るも楽しんでいるし、私のことなんて気にする素振りもないし。



あの男が表情を変えることはないと知ってはいるけど。


自分でもわかっているが、不貞腐れてジョッキをあおる。



呆れたようにため息をはいた相川さんが、ぽんぽん頭を撫でるから涙腺が緩む。

そのうえ、再びジョッキにはビールを注いでくれる。


「まだ俺も死にたくないからね」

「……御手洗い、行ってきます」


立って歩き出せば、思っていた以上のアルコールを摂取していたらしく、視界が歪み、足元も覚束ない。

ひんやり、した水に浸した手を額に当てれば、若干意識がはっきりする。

流石に若い頃みたいな体力はないから二次会には出れないな。


そう思い直して、御手洗いを出て、すぐ近くの壁に寄りかかる。
風が通り抜けるから、火照った肌にちょうどいい。




「……こんなとこで寝るなよ」


これは幻聴。

< 7 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop