最低彼氏にはさよならがお似合い
「2年も音信不通のくせに何言ってるのよ、ふざけないで。自然消滅で別れてるって言っても可笑しくないだけの年数よ、
それを甘い言葉囁いて誤魔化そうなんて、冗談じゃないわよ。
昔はそれで騙されたけど、2年たてば私だって成長するわよ。
あんたなんかしらない。
馬鹿にしないで、もう終わってるの私の中では。
もう好きじゃない。自惚れないで」
言いたいだけ言って、さっさと踵を返す。
水瀬の顔を見て言うことは出来なかったけど、どうせ私を苛立たせるような表情しかしてないと分かっていたから。
エレベーターに駆け込んで、すぐさま1階のボタンを連打する。
動き出したエレベーターの中でひとり、俯く。ぱたり、足元に水が落ちて、
「……っ。なんで泣いてるのよ」
必死に涙をこらえようとするも、逆効果で、かえって涙が溢れてくる。
「ふざ、けんな」
開き始めたドアの先に人が見えて、顔を見られないように俯いた。
誰だかわかってしまったから、ドアが開ききる前に隙間を抜けて、行こうとしたのに。
「櫻井?」
呼ばれた名に足を止めてしまった自分を恨む。そうは言っても振り返るほどの度胸はなくて、諦めてくれないかと少し期待を抱く。
「……櫻井」
泣けよ、見えないから。
そっと引き寄せられ、抱き締められると言うより、本当に言葉通り胸を貸される。
引き寄せられるように額をYシャツにつけて、涙を解放する。
止めどなく流れる涙を流しながらも
ぎゅっと握りしめていたYシャツが皺になる、そんなことを泣きながら頭の片隅でぼんやり考えていたような気もする。
「……落ち着いた?」
そっと顔を離した私の頭をぽんぽん撫でながら、顔は覗き込まない。
やっぱり根は紳士だ。