思い出す方法を教えてよ
夏樹はとても可愛い子供だった。私と藍は女の子で、夏樹は男の子だというのに、3人一緒にいて夏樹が一番可愛いと言われたことは一度や二度じゃない。小学校低学年くらいまでは女の子に間違われていた。
お母さん譲りのくりっとした大きな目と白い肌。私から見ても夏樹は可愛かった。客観的に見てもそうだったんだろう。私と藍は普通。夏樹は可愛い。こんなこと言ったら藍から怒られるかな。
もちろん男の子の夏樹は可愛いと言われるたびに複雑な顔をしていたし、同時に私と藍の反応を気にしていたのだけど。
夏樹は優しい。昔から困っている人は放っておけない性格だった。小さい時におもちゃやお菓子が3つあって、好きなのを選んでいいよと言われると、決まって僕は最後でいいと言うような子供だった。

中学3年生になって急に背が伸びた夏樹はかっこいいと言われることが多くなった。もともと誰にでも優しい夏樹は密かに人気があった。背が伸びた夏樹はすらっとしてかっこよくなったから、更に人気が出てもおかしくない。
私と藍は夏樹のことを聞かれることが多くなった。なんだか少し寂しかった。夏樹が遠くなってしまった気もしたけど、夏樹の態度は何も変わらなかった。私と藍と夏樹は中学生にしては珍しいくらい仲が良いままの幼馴染だった。

夏樹を好きだと気付いたのはいつだっただろう。かっこいいと騒がれだした頃かもしれない。誰かが告ろうかなと言っているのを聞くと妙に落ち着かなかった。
夏樹が誰かと付き合うのかと思うと、なぜか嫌な気持ちになった。
藍はそれは恋だと断言して、告白しなさいと言った。
夏樹は私より頭が良かったから、高校は離れると思っていた。学校が離れても今まで通りでいられるか心配だった私は好きだと言えなかった。

直前に成績が伸び悩んで、第一志望校を諦めた夏樹は、結局私達と同じ高校に進んだ。合格発表を3人で見に行って、合格がわかったその日に私は告白したのだ。夏樹は真っ赤になって頷いた。藍から冷やかされると、更に真っ赤になって逃げてしまった。
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