恋色流星群
「理沙子はさ、うちのやつらの音楽とか聞くのか?」
倫くんは、大手芸能事務所の代表取締役。抱えるのは、あの『planet』から女優、モデルまで多数。
久しぶりに父親に会った子供のように話し続ける私の話が途切れたとき、倫くんは自然に切り出した。
『もちろん聞いたことあるよ。事務所でもよく流れてる。お店に、planetがすごい好きな子いるの。』
空いたグラスに氷を足しながら答える。
『けどねー、正直、曲の名前までは分かんないな~。笑
男くさいのは知ってる。』
「男くさいって。笑」
こんな失礼なことが言える、私と倫くんとの関係。
父であり兄であり、親友であり、男。
私にとって、男子の全てを果たす存在。
「・・・planetのライブは来たことないんだっけ?」
ロックアイスを指でくるくる回しながら、まっすぐ私を見る。
planet・・・
航大とチョコのグループだよね?さすがに、それは知ってる。
『行ったことない。正直、チケットもらったことはあるんだけどね。仕事で行けなかった。』
「誰がチケット持ってきたの?」
『航大。』
「あー。ここ来てる?」
『最近は全然。けど外で一瞬会ったりする。』
そっか、仲良くしてくれてありがとな。
そう言って、倫くんは柔らかく目を細めた。
航大を初めてここに連れて来たのも、倫くんだった。
「失礼します」
ボーイの声で、誰かがやってきたことに気づく。
「お連れ様、お見えですのでお通しします。」
頷いた倫くんを確認して、開ける扉。
そこには、小柄で可愛らしい笑顔の男性がいた。
第一印象は、おしゃれ!
なんというか、自分の可愛さ分かってますって感じのオーラが出てる。
それが嫌味ではなく、女子をきゅんとさせる感じ。
「すいません、遅くなりました。」
倫くんに頭を下げ、早足で近づいてくる。
「いやいや、お疲れ。急がせて悪かったね。」
倫くんが、彼に自分の横に座るように手で合図するのと同時に、私の前に彼用のグラスが運ばれてきた。
「理沙子、うちの直生。planetのリーダーだよ。」
『はじめまして、理沙です。』
一瞬にして伸ばした背筋で、首をかしげながら挨拶する。
私今、変わり身の技で営業オーラ出してるだろうな。
一瞬、彼は驚いたような表情で。
けどすぐに、私に負けない営業スマイルで可愛いらしく笑ってくれた。
「はじめまして、直生です」
「理沙子、営業しないでいいよ。笑
航やチョコのように、フレンドリーにしてやって。」
「あ、やっぱりこの人が・・・」
倫くんの言葉にかぶせるように、ポロっと呟いた直生さん。
「ん?なんかあった?」
「あ、いやいやすいません。」
ひたすらにキュートな人。
それが直生さんの第一印象。