恋色流星群
瞳にはメデューサの魔力。
視線を合わせると体が石になって。心臓の鼓動だけが、鳴り響く。
そんなに愛しそうに
私を覗かないで。
「・・・要くん?!」
瀬名ちゃんの声と同時に、ホノルル空港に引き戻される。
要「おはよう、瀬名さん。」
瀬「なんでここにいるの?!」
要「見送り。理沙子の。」
瀬「そうじゃなくて!どうやって来たの?!」
要「機材さんで同じ便出発の人がいたから。バスに乗っけてもらった。」
瀬名ちゃんへ向く横顔。
黒いレンズの縁からはみ出る、笑いじわに胸が鳴く。
瀬「焦った・・・遠くから見てナンパかと思った・・・。」
『瀬名ちゃん、そんなことより電話は?!』
瀬「あ、それが・・・出ませんでした。寝てるのかも。」
『よくやった!着信残すことに意味があるんだよ♡あとは待つのみ♡』
瀬「はいっ・・・!汗
あ、これ。ついでにチェックインしてきたので。もう荷物も預けられますよ。」
そのとき。
瀬名ちゃんの手元のiPhoneが震えた。
覗きこんだ瞬間
「・・・!・・・ひぃっ・・・!!」
可愛い。
反応で、状況ばればれなんだけど。笑
『出て出て~♡あとはもう一人で大丈夫だから。
日本に帰ったら、また連絡するね。』
「・・・はいっ!!
あーー、私理沙さんが大好きです!絶対私も連絡します!」
両手でiPhoneを握りしめて、涙目で叫ぶと。
もしもしっ・・・と、緊張した面持ちで耳に当て離れて行った。
「じゃ、行きますか。」
見上げると、柔らかく笑んで。
当たり前にリモワを奪い、カウンターに向かう。
「あーー、俺もこのまま帰りたい。」
『午後の便なんでしょ?もうすぐだよ。笑』
「違うよ。」
『え?だって、みんな私以外は午後の便だって・・・。』
「うん、それは合ってる。けど、俺が帰りたいのは今。」
カウンターの列の前で立ち止まって
私にリモワを受け渡す。
「このまま、離れたくないってこと。」
耳が赤く染まる音は
自分にしか聞こえない。
左耳に囁かれた最後の甘い言葉は。
「俺なら、首輪よりも指輪を贈る。
本当は今すぐ、理沙子の全部を取り返したいくらいだ。」
柔らかな笑みを纏い、秘められた熱と牙を隠す。
美しき獣。
その夏、彼らが作り上げたこの楽曲が。
音楽チャートに旋風を起こし、各種記録を塗り替えて。
数ある音楽賞を総なめにしたのも。
もう少し、先のお話。