恋色流星群


仕事後は、いつもお店の送りの車ではなく、一人でタクシーで帰っていると話したら。

眉をひそめて黙った後、時間が合う日は自分が送ると言った。





本当に迎えに来てしまった1日目、押し込められた助手席で、申し訳なくて散々断ったけど。



「そうさせて。理由つけて、会いたいだけだから。」


と微笑む横顔に、もう何も言えなくなった。






かと言って、アヤちゃん曰く“今、一番キテるplanet”のボーカリスト。
二週間に一度、来れるか来れないかだけど。


私がタクシーで帰る話をしたときに呟いた「危ないな」の甘さは。

リフレインするたび私の胸をしめた。









同じ六本木で、私のマンションとそう遠くない場所に住んでいるという要くんは。

諸々のパパラッチ対策もあるんだろうけど、車内でも決して私に触れることはなく。

マンションの前に着けば、すぐに「おやすみ」と微笑んで私を解放する。




安全で安心で。
要くんの隣にいると、ゆるゆると手足を伸ばして、温水に浮かんでいるような感覚で。

だけど、たまに一瞬見せる熱っぽい視線や強い眼差しが、私に油断を許さず。


適度に心地よい、緊張感と色気。









「今週末、急に半日オフにできたんだ。」

『えー、よかったね!』



ラジオでも有線でもお店でも。至るところで耳に入る夏の楽曲。

テレビはあまり見ないから分からないけど、そんな私でも彼らを感じない日はなくて。





瀬名ちゃんの言う“プロモーション活動”でかなりかなり忙しいはずの毎日。

そんななか、どうやって時間を作って私をピックアップしに来てるんだろうと、胸が痛かったから。


彼にオフが出来たと聞いて、素直に嬉しかった。

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