恋色流星群

11#瀬名side



こんなに忙しいの、入社して初めてかも。


まだ第二弾シングルの余波が止まらない中、早くも第四弾シングルの企画会議。

今年のplanetを締めくくる、集大成。
この追い風に乗って更に勢いをつけられるよう、スタッフの白熱した想いは到底3時間じゃまとまらなくて。


出しに出された意見は私が集約して、再度月曜の会議で詰めることになった。






誰もいなくなった会議室で一人。
配布資料の残りと、使い捨てのコーヒーカップを集める。

もう21:00か・・・。
やりかけてた仕事も、全然終わってない。
明日は、久々の休みだったけど。
このままだと出社だな。



休日出勤を思うと、それだけで疲れが増したようで。

少しだけ、パイプ椅子に腰かけた。






分厚い資料のページをめくる。

資料の衣装協賛のページには、曲調に合わせた各メンバーの衣装イメージ像が載ってる。





「かっこいー・・・。」





第二弾シングルの目の回るヒットぶりに。

輝くことが仕事の直生さんと
輝かせることが仕事の私。

同じゴールを目指してるはずなのに、全く顔を合わせなくなった。


私はただの裏方で、もともと近い距離ではなかったけど。





ハワイでの出来事は、全部夢だったんじゃないかと思う。
同じドリンクを片手に道を歩いたことも、隣で花火を見上げたことも。








会えない日々で、思い知る。


私は本当に、直生さんがいないと意味がない。










ツンとした鼻奥に焦って、慌てて机に突っ伏した。


貪欲で、身分知らずな自分がきらい。
不毛な恋はその8割が、自分の愚かさを見せつけられる瞬間の連続。

声をあげて、泣きたくなる。





「さむ・・・。」




ここの会議室は冷房が効き過ぎる。



冷たくなった二の腕を抱えたら。

白くなる意識の中に、やっと、あの笑顔が見えた。

















水槽の中

金魚が酸素を探してパクパクするように




私も彼を探して

音なく、会いたいを繰り返す。


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