恋色流星群
壁の時計を見て、飛び起きた。
寝ちゃってた・・・私は本当にバカか。
慌てて立ち上がった瞬間、肩から落ちたモカ色のカーディガン。
誰かの忘れ物?
あれ、けど今、私の肩から落ちたよね?
23:10を指す時計の針に。
慌てた脳内では、それ以上を考えている余裕がなく。
泣きたい・・・
ただそれだけを考えながら、資料とゴミを抱えて会議室を飛び出した。
誰もいないことを覚悟して、恐る恐るデスクフロアを覗くと。
「瀬名ぁ!おめーどこ行ってたんだよ!」
飛んできた罵声に、危うく資料を落としそうになる。
「浅山・・・あんたまだいたの?遅くない?」
フロアにただ一人残っていた、同期の浅山。
こんな時間まで残ってるなんて珍しい。
「誰のせいだと思ってんだよ・・・
もう俺帰るから、施錠とか頼んだぞ。」
見るからに不機嫌そうに、音を立ててデスクを片付ける。
「なに怒ってんの?待っててなんて頼んでないじゃん。」
確かに、居眠りしてましたけど。
浅山には迷惑かけてないもん。
「おめーがまだ残って仕事してるから、待ってろって頼まれたんだよ!」
八つ当たりのように、シュレッダーに次々と書類を詰め込む。
「は?誰に?」
仕事なんてしてない。
情けなく、一人会議室で寝てただけ。
こんな大きな音でため息ってつけるんだと思うほど。
浅山は恐らく体中の空気を吐き出し、恨めしそうな視線を私に投げて。
「直生さん。」
不機嫌そうに呟いた。