恋色流星群
12
“明日、15:00でも大丈夫?”
“全然いーよ。
倫くんからランチに誘われてるんだ。その時間なら間に合いそうだから行こうかな。”
“了解です。
その後、倫さんと事務所来るなら、そこで待ってて。一緒に帰ろう。”
暇でゆるい、土曜日の夜。
お店は張り切って“浴衣デー”。
色とりどりの金魚が、お店の中をふわふわと泳ぐけど。
お盆の週の土曜日、世の男性たちは家族サービスで大忙し。
私は無駄に泳げずに、営業のふりをしてカウンターで携帯をいじる。
LINEって便利だよね。
ほんと、会話してるみたい。
“要くん、いま何してるの?”
“PV撮影中。
いま目の前で、航がめちゃくちゃかっこつけてる。”
『・・・ぷっ!笑』
これまた暇そうな葵ちゃんが、携帯をいじりながらチラリとこちらを睨む。
“ウケる。要くんもかっこつけてよ。”
“明日ね。”
さらりと画面に現れた3文字に。
瞬間、頬が熱くなる。
なに、“明日ね”って。
「理沙さん、木戸様からお電話です。」
「呼んで!今日暇すぎてやばい。」
ボーイくんと葵ちゃんの声が重なり、慌てて頬を抑えて立ち上がる。
どう言えば
どう笑えば
この暇な土曜の夜を埋めてもらえるのか、私はもう知ってる。
5人来るよ、の意味で。
手をパーにしてボーイくんに見せると。
おお~っと、控えめな拍手が湧いた。
受話器を当てる反対側の耳が、隣で話す葵ちゃんとアヤちゃんの会話を拾う。
葵「えろい顔して携帯ばっか見てると思えば・・・やっと働いたわね。」
ア「葵さん、知らないの?あれはえろい顔じゃないよ。
______________乙女な、顔だよ」