恋色流星群
溺愛の築地のお寿司屋さんで。
倫くんと二人、カウンターに並ぶ。
『ハモって何でこんなに美味しいんだろう・・・。涙』
「よかったな。笑」
ハワイから帰ってから、こういうお店で“接待”をしてもらうのは、もう何度目だろう。
それだけあの曲が、ヒットしてるってことなのか。
誘われるたび、大好物を目の前に広げられるたび。
あの日の勇姿を褒められているようで嬉しくなる。
私は倫くんの前では、世界で一番子供になる。
「カナが、お土産で貰ったパンケーキの粉めちゃくちゃ喜んでたよ。」
『いえいえ♡食べた?美味しかったでしょ?』
「カナが作れば、何でも美味い。」
おいこらーと笑いながら、倫くんにグーパンチを上げると。
すいません、と笑いながら。
さりげなく大将に私の飲み物のお代わりを合図する。
いつか遠い未来で、私にも結婚というものが訪れるなら。
私もこんな旦那さんがいいな。
「この後どうする?家まで送ろうか。」
ごくん、と。
辛めのジンジャーエールを飲みこんだ。
『あー・・・いや、えーとね。
倫くんは?』
「俺は事務所に顔出しに行くけど。
どこか予定あるなら、そこまで送るぞ。」
『あ、じゃあ私も事務所まで乗せて。』
倫くんから、なぜか目をそらしてしまう。
『ちょっと、この後、待ち合わせしてるから。』
どうしよう、航大だと思われるかな。
けど聞かれてないし。
要くんのプライバシーだって、あるし。
「分かった。何時待ち合わせ?」
意外にも、倫くんはそれ以上突っ込んではこず。
『15:00。たぶん遅れても別に大丈夫だけど。』
「15:00か。じゃあ、そろそろ行こうか。」
いつも通りの、神様オーラで微笑んで席を立つ。
古いビルのエレベーターは、少し蒸し暑い。
「今日、瀬名さんも出社してると思うよ。会って行けばいい。」
『まじで!♡嬉しい!!!』
思わず、腕にしがみつくと。
「てことは、待ち合わせ相手は陽斗か。」
チーンと、ドアが開く音を合図に。
私は見事に、固まる。
閉まりかけるドアの奥で、硬直する私に。
「ごめんごめん、独り言。」
と笑いながら“開”ボタンを押し、私の手を引いて現実世界に引きずり下ろすのは。
ゼウスとサタンを肩頬ずつに持つ
私史上最強の、男。