恋色流星群
少しずつ暗くなる海を見てたら、地方にいるという剛田大が浮かんだ。
何となくだけど。
今夜は電話がかかってきそうな気がした。
「理沙。」
ふわっと頭上に手の平の柔らかさを感じて。
顔を上げると、金田さんとカウンターで話し込んでいた要くんが。
穏やかに微笑んでいた。
『もう話いいの?』
「うん。ごめんね、待たせて。」
全然待ってないけど、といちいち返そうと思って。
その瞳の柔らかさに止める。
「さっき、知り合いのプロデューサーの人から連絡があってさ。」
難しい顔をして話してた、さっきの電話。
「なんか今日、俺がオフだっていうの聞いたみたいで。
クラブでイベントやってるから、顔出さないかって誘われて。」
『へ~、どこの?』
「渋谷。」
困ったように、下がる眉毛と完璧な口元。
「行かないわけには、いかない感じの・・・相手なんだよね。」
『え、全然いいよ。』
一瞬、要くんの瞳は寂しそうに光ったけど。
すぐに、柔らかさを取り戻した。
「急にごめん、俺から今日誘ったのに。
先に理沙を送って、渋谷に向かうから。」
『え?』
「え?」
微妙にずれて、重なる私たちの反応。
『一緒に行くんじゃないの?』
当たり前に、一緒に行くんだと思ってたけど。
『だって、まだ19:00だよ?』
さすがに、もうちょっと。
大人なら、一緒に過ごしてもいい時間。
驚いたように丸くなった瞳は。
「いいの?」
『え、だって顔出すだけなんでしょ?あ、私いないほうがいい?』
「いや、全然。理沙がいいなら、全然一緒に来てほしい。
本当にいいの?クラブとか平気?」
『うん、大丈夫だよ。クラブなんて、久しぶりだな~。あ、私踊れないからね。笑』
悪戯に、おどけて顔を覗き込めば。
「躍らせないよ。
絶対、俺のそばを離れないで。」
ふわっと両頬を捕まえられて。
降ってくる声と視線が、あまりにも甘くって。
うっかり、こんな角度で見上げてしまった自分を後悔する。
「だから、いちゃつくなってー」
「ごめん。笑」
綺麗な横顔は、カウンターの方を向いて笑うのに。
その手は私の両頬を解放してくれなくて。
何だか私、
捕らえられた宇宙人みたいだ。