恋色流星群



地下の駐車場まで下りるエレベーターの中は。
息が吸いにくいほど、空気が重くて。


隣で足元を見つめる要くんは、相変わらず何も喋らなくて。
情けない私は逃げ出したい衝動にかられる。

ひたすら、誰かが乗ってきてくれることを祈った。




祈りが通じたのか、徐々に動かなくなり、三階で開いた扉は。光と二人の男を飲み込んだ。


二人きりじゃなくなったことで、何となく感じた安堵感も束の間。

今度は、乗ってきた男からギラギラと嫌な視線を感じ出す。
チラチラと私を振り返っては、顔を寄せ合って何か話してる。

私と要くんとの距離は。
他人と思われてもおかしくないほど、空いていたから。
「誘う?」小さく、聞こえた気がした。



普段だったら、お店のお客様かもしれないし。
露骨に誰かに嫌な態度を取ることはないんだけど。

今は最悪に気分が悪くて、まともな反応ができる自信がなかった。



好奇の目が振り返る。

やだな、話しかけられる・・・
要くんの左で、唇を噛んで身構えると。










瞬間、強く右から肩を抱かれた。

同時に、殺気立った色気が立ち上がる。




ぐっと要くんが抱き寄せたことで、私の顔は否が応でも下に下がる。
ちっとも手加減のない、その強さに。


“下向いてろ”

そう言われた気がして

胸が鳴いた。




突然、要くんが放った圧倒的な“俺の女”感に、男二人は沈黙を貫いて。

おとなしく、地下の駐車場で扉が開くのと同時に降りていった。



地下二階。ここで降りなきゃ。

何事もなかったかのように解放された体と、そのまま歩き出した要くんに焦って。
私も後を追ってエレベーターを降りようとすると。







あと一歩でエレベーターを降りずに、扉の手前で要くんが押したのは。


“開”ではなく“閉”のボタンだった。

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