恋色流星群
15#航大side
見覚えのない発信者番号に躊躇う。
昨日も、この番号から着信があった。
固定番号なのを見ると・・・
どこかの、店なのか何なのか。
本日二度目の、しつこく鳴り止むことのない振動に。
思い切って“通話”をタップすると
“七瀬さんのご携帯ですか?”
待ってました、といわんばかりに。相手はさっさと話し始めた。
「あ、はい。」
“ペットホテル、みるきぃの者ですが。
お預かりしている、レオンちゃんのお迎えの件なのですが・・・”
ペットホテル、みるきぃ。
待てよ、いまレオンって言った?
“・・・ということで、いつ頃であればお迎えが可能ですか?”
「あの、・・・レオン?
レオンがそこにいるんですか?」
“え?あ、はい。
一昨日お迎え日のお約束で、お預かりしてますが・・・。”
「いつから?」
“はい?あ、えーと・・・水曜日、です。”
水曜日。
チョコが、瞬殺で追い返したというあの日。
あの人から来ていた一本のメールには。
どこかの住所と電話番号、
そして確か“みるきぃ”とだけ書かれていた。
何度となく、狂言に騙されてきた俺は。
その意味不明な内容を、特に気にも止めずに。そのままスルーしていたけど。
あれは、もしかしたら。
レオンを返す、の意。
そして。
それは、もしかしたら。
“七瀬さん?もしもし?聞こえますか?”
「明日まで預かってもらえますか?
明日必ず、迎えに行きます。」
無理くり、明日の引き取りで話をつけ。
通話を切ってそのまま、あの人の番号をタップしかけ直す。
そういえばあの水曜日から。
狂ったような着信履歴が一切入らなくなった。
今、つかまえて話をしなければ。
俺は一生、理沙を逃す。
「もしもしっ、・・・」
“おかけになった電話番号は、現在使われておりません…”
機械音の前に、立ち尽くす。
“繰り返します。
お客様のおかけになった電話番号は、現在使われておりません…”
逃げられた。
きっと、俺の手の届かない場所へ。
あの人の、考えそうなことだ。