恋色流星群
明日、餌とかトイレとか買いに行かなきゃだなぁ。
こんな、初対面の私の腕の中で。
全体重を預けきって、おとなしくしてくれてる姿が。
愛しすぎる。
『可愛いな。めちゃくちゃ癒されるね。』
「理沙子。」
ふと、名前を呼ばれて。
『んっ__________』
運転席側に回した首に、そのまま柔らかく手の平が添えられて。
私の瞳が閉じるのも待たずに、柔らかな唇で思考を取り上げられた。
少しずつ角度を変えて、幾度も啄ばまれる唇と。
同じ香水なのに、私のとは確実に違く立ち上がる航大の香り。
「理沙子。」
時々漏れる私の名前は。
まるで自分自身に存在を確かめてるように響いて。
あまりにも突然に発揮される優しさに。
抵抗する気も、失せる。
なんだ。
この、男。
狂気じみたやり方だけじゃなくて。
こんな、優しいキスもできるんじゃない。
緩くかかってくる、航大の体重と。抱いてるレオンが気になる。
そう思った瞬間、あっさりと唇は離れて。
「貸して。」
今度は両手でレオンを私から取り上げると。
「お前はこっちね。」
柔らかく、その小さな体を後部座席に下ろした。
駐車場の、人工的な光がぼんやり漏れてくる車内。
珍しく、今日は音楽がかかっていなかったことに気づく。
とん、と肩を押されて。
レオンを離して自由になった体がシートに沈んだ。
『なんか、今日静かだね。』
「うん。」
静かすぎて落ち着かないから。
いつもみたいに、ノリのいい音楽をかけてよ。
そう、言おうと思ったのに。
逆光で影を作りながら降ってくる綺麗な顔と、その性急に熱を帯びた瞳に。
私は、ある種の諦めを感じる。
微かに傾けた顔と、唇が重なる瞬間に小さく聞こえた
「好きだ。」
まるでそれが合図かのように始まる、目の回る深いキスに。
このまま柔らかいシートに、どんどん体が沈んでしまいそうな気がして。
私は思わず、これ以上体が堕ちないように
航大の首に手を回した。