恋色流星群
向こう一週間分はあるという餌やグッズを、玄関の前で受け取った。
これだけ無理やり押しかけておきながら、この後まだ仕事があるというこの男は。
それでも大量の荷物を、レオンを抱く私のあとについて部屋まで運んだ。
『なにこれ、可愛いー。笑』
軽く押すとブーブーと鳴るハチのぬいぐるみ。
「それ好きなんだよ。夜鳴いたら、それで遊んでやって。」
フローリングに下ろした瞬間、カチャカチャと爪を鳴らしながら元気に部屋に入って行った小さな背中。
『そういえばさぁ、今度チョコと3人で飲もうよ。休み合う時ある?』
「いいけど。何で?」
『べつに。前は、よく3人で飲んだじゃん。』
あの日、快く駆けつけて私の心を軽くしてくれた。
夜通しくだらない話で、私の睡魔を待ってくれた。
航大には、もちろんだけど。チョコにもちゃんとお礼がしたい。
『お店はもう決めてるんだ。2人がいい時を教えて。』
一瞬、何か思い当たったような顔をして。
すぐに柔らかく目を細めた。
「分かった。お前はいつでもいいの?」
『2人のほうが忙しいでしょ。そっちに合わせるよ。』
「そんなこともねぇと思うけど。笑
じゃあ、そろそろ行くわ。レオンのことよろしくな。」
部屋の奥から、大冒険を終えたレオンがカチャカチャと音を立てて戻ってきた。
「いい子にしてろよ。」
腰を落とした航大を、レオンが首を真上にもたげて見上げる。
『してるよね。』
私も屈んで、その背中をゆっくり撫でると。
今度は私を見上げて、パタパタと尻尾を振った。
『早く迎えに来てね、って。』
航大に視線を戻すと。既に、その瞳は私を見ていて。
なんだろう。
今日の瞳は。
熱っぽいのに、緩やかであったかい。
「もうすぐ、迎えに来るよ。」
レオンではなくて、その視線で私を捕らえたまま。
ひどく甘く響いたその言葉に。
ことりと、胸が音を立てた。
閉まったドアにチェーンを掛けて。
玄関に落ちた、ハチのぬいぐるみを拾い上げた。
私、きっと今日。
航大の嬉しそうな顔を。
嬉しい、と感じた。