恋色流星群
「あれ?今日、この後とかじゃないんすか?」
お疲れ、と出て行こうとすると。
Tシャツをかぶりながら、嵐が不思議そうな顔で尋ねた。
「いや、後日。ちゃんと作戦立ててからじゃねぇと。」
「作戦って・・・まじすか。」
また、露骨に嫌な顔をする。
「大丈夫、知恵を絞って勝つ。」
「あ、チョコさん頭いいんでしたよね?頼みますよ、ほんと。」
彼女、そんなに怖い子なの?
ふと聞いてみようかと思ったけど。
さっさと鞄から携帯を出して、嬉しそうに覗いてる横顔が。
その問いの回答になっている気がして、やめた。
「お疲れ。」
「お疲れでーす。」
事務所を出ると、すぐ目の前でタクシーがつかまった。
名前だけは聞いたことがある、その店の名前を告げてシートに体を埋める。
“先にお店入ってるよー(o^^o)”
理沙からのLINEに、“今から向かうよ”と返事を打った。
流れ出した夜の景色に、あの日の航さんが浮かぶ。
「もうやめろ。」って言った直生さんに。
「すいません。」って、頭を下げた。
汚れた白いTシャツと。目のすぐ横で、滲んでいた血。
濃い悲しみで縁取られた、瞳。
どうしようもなく覚えた、苛立ち。
思いつく手段があるのに、
もう
見て見ぬふりなんてできない。