恋色流星群
失礼します、と少し開いた引き戸から
渡された会計票を受け取る。
・・・うわ、やば。
見る?と航さんに向けて軽く持ち上げると、首を振ってカードを差し出された。
おとなしく、そのカードを受け取って会計票と一緒に引き戸の外へ戻した。
「やばいよ!想像超えてた。」
「だろうね。ビビりそうだったから、見なかったけど。」
「本当にいいの?俺の分。」
「いいよ、あいつ楽しそうだったし。今日はありがとな。」
“いいよ、あいつ楽しそうだったし”
航さんにとっての価値観。
戻ってきた理沙が、少しふわふわした足取りで航さんの隣に舞い降りた。
髪がブラウスの、首後ろのファスナーにひっかかったと。
眉を寄せて、航さんに訴える。
うなじを航さんだけに見えるように、少し上げて。
何も言わずに、器用にそこへ指先を使う航さんの視線は
相変わらず優しくて。
2人の、其々の甘い仕草に。
「帰りたい。」
思わず、こぼれた。
『え、これはいちゃいちゃしてるわけじゃないよ!』
「分かってるよ。笑」
『疲れた?眠い?』
「ううん。なんか、いいなぁって思って。
そしたら、家に帰りたくなった。笑」
急いで帰って。
俺もそういう仕草で。今日1日を、終わらせよう。
不思議そうに首を傾げた理沙の後ろで。
航さんが、「取れた」と笑った。