恋色流星群
カウンターの横、絢爛な螺旋階段の手すりにもたれて携帯を見てる。
目深に被ったキャップに、華奢に見えるけど骨太な感じ。
『チョコ!』
知った顔の来訪は全く予想外で、思いのほかうれしかった。
張り詰めた神経が、少しだけリアルに引き戻される瞬間。
「おー、お疲れ。てかすげぇ忙しそうだね。」
きれいな歯並びを見せて、笑って顔をあげて。
『そうそう、火曜日なのに。疲れたよー。笑
一人?来てくれると思ってなかった!』
「うーん。今日は一人でも入れるんじゃないかと思ってたから、ビビったw」
『え、全然いいよ、入りなよ。今のとこ帰れば、あたし空くから』
「いや、こんな混んでて一人は迷惑っしょ。
また改めて来るよ、ゆっくり話したいこともあったし。」
キャップの下からチラチラ覗く目がくるんとつぶらで。
ほんと、犬みたいだなぁ。多分、すっぴん。なんとなく、痩せた気もする。
『わん。』少しかがんで、帽子の下から覗き込んだ。
「は?なに。てか、そーいうのやめてw」
私がちょっとでも可愛く見せると、「俺相手に商売しない!」と逐一反応してくれるチョコ。可愛いなぁ。
チョコ、もとい千代 剛(ちよ ごう)。
職業、ダンサー。某人気ダンスグループ『planet』に所属してる。
あまりテレビを見ない私は疎いのだけど、中高生から大人女子まで・・・最近は、男性層も?
とにかく、幅広い層の人たちに人気沸騰中らしい。
『チョコ痩せた?なんか頬っぺたこけてない?』
「あー、絞ってるからね。もうすぐツアーだから。」
『ふーん。初耳だ』
「そんなことねーよ、言ったし。つーか、俺以外もたぶん言ってるはずだし。笑」
『チケットください♡』
「買ってください。笑
あ、そうだ_____これ。」
小さな紙袋を差し出した。