恋色流星群
あの夜、鳶色の瞳を見つけた時から。
この人の側にいたいと思った。
昔からママの知り合いだった倫くんが、ママのお店に連れてきたのが翔さんだった。
あの夜、私はまだ18歳で。
翔さんは、32歳だった。
「綺麗な髪だな。」
たった、そう一言言われただけで。
私の世界は、色を変えた。
大人っぽいと、言われて育った自分に自信があったのに。
何度、好きだと伝えても。
何度でも、笑ってかわされて。
翔さんと同じ時に生まれなかった自分が悔しくて、泣いたりした。
それくらい、私は彼が好きだった。
散々頼み込んで。
初めて、翔さんに髪を切ってもらったとき。
「どうする?」
鏡ごしに、私を見据える鳶色に。
『好きにしてください♡』
そう答えたら、思ったとおり吹き出して。
「じゃあ、刈り上げるか。」
この、大きな目尻の笑い皺が。
私は世界で一番好きな景色だと思った。
私の髪に注ぐ、熱い眼差しも
鼻筋の通った横顔も
その一挙一動全部を
灼きつけたくて息を潜めてた。
成人式の、夜。
生まれて初めてキスを知ったとき。
やっと頷いてくれた、柔らかい瞳に。
私はこれからの何もかもを、翔さんに教えてもらおうと心に決めた。
満ちていく身体の感覚も、自分のものとは思えない、甘い悲鳴も。
全部翔さんが教えてくれた。