恋色流星群
扉がゆっくり閉まりかけるのと、同時に。
「久しぶりだね。忙しい?」
少し後ろに立つ直生さんから、話しかけられた。
大欠伸のあほ面は見られてしまったけど、これ以上こんな疲れた顔を直視されるわけにはいかなくて。
私は頑なに前方を向いたまま。気絶しそうな直生さんの気配に耐えながら、声を振り絞る。
「そうですね、最近は落ち着いて来ましたけど。」
直生さんの、過労と努力と忍耐に比べたら。
下々の切れ端で生きる私なんて、比じゃないから。
直「そっか、じゃあさ。」
ふわっと。
気配が、柔らかく舞った気がして。
直「そろそろ、行ける?」
急に、柔らかく顔を覗き込まれた。
い、
いく?!?!
「もしかして・・・、飲みに行く、っていう。お話の件ですか?」
直「うん。今週末とかどうかな。」
直生さん。
私が社交辞令だと毎晩言い聞かせてきた、あの約束。
覚えてて、くれたんだ。
直 「今週末って、早すぎる?」
覚えてたのは。
私だけ、じゃなかったんだ。
「あ・・・、今週末は、日曜も出勤するつもりなんです。」
直「じゃあ、合わせるよ。仕事終わったら、連絡して。」
仕事の後?
そのあと、私と会ってくれるってこと?
「あ、じゃあ!浅山とか、久保さんとか、誘いますか?最近、みんなで飲みに行くってあんまりないし・・・。」
そうそう、直生さんはもともとそういうつもりなんだろうな。
なに、ソロでスカウトされたつもりになってるの、自分!
調子に乗るな、自分!!
直「瀬名さんって、彼氏いるの?」
「へ?!?!」