恋色流星群
例年より早い梅雨入りが発表された6月頭。
倫くんから、久しぶりに食事に誘われた。
指定された店が、私の大好きな銀座の某和食料理店で。
個室に通され待っていると、カナちゃんが入ってきた時点で。
『しまった、断れない・・・』と、まんまと来てしまったことを後悔した。
ここの和食屋さん、倫くん、溺愛のシャンパンが揃えば。
私は倫くんの頼みを100%断れない。
そのうえ、新妻の可愛い可愛いカナちゃんがついてくれば、もう最強。
久しぶりに私が断れない状況を作り出している倫くんに、緊張と不安を感じた。
「だよねー、やっぱりそういう顔になるよねぇ。笑」
腰を下ろし、おしぼりで手を拭いていたカナちゃんは、申し訳なさそうに笑った。
『内容、聞いてる?』
「分かんないんだよね~・・・彼の仕事のことっぽいなとは思うんだけど。」
倫くんがここで私を四面楚歌状態に陥れ。
幾度も私を降参させてきたことはカナちゃんにも周知の事実。
仕事のこと?
それはまた、新たなジャンル。
なんだろ?大事な接待でうちのお店を使うとか?貸し切り?
けど、それくらいだったら今までにもあったしな・・・
「けど久しぶりに理沙子ちゃんに会えて嬉しい!倫介さんが来る前に、じゃんじゃん好きなもの頼んじゃお♡」
女子会だ~♡と無邪気にメニューを開くカナちゃんに、胸があったかくなった。
こんなに素敵なお嫁さんを紹介してくれたとき、私の中で倫くんの男レベルは神の域に達した。
『やばいな、倫くんはもう神だわ。』
倫くんがカナちゃんを紹介してくれたあの日。
夫妻が帰ったあと、3人で飲み直していた席で私が呟くと。
「なんだよ、神って。笑」と、航大とチョコが笑った。
『もう凡人には追いつけない男レベルになったってことだよ。サタンだな!』
「なるほど、めちゃくちゃ強いみたいな!」
意思疎通できた私と航大が盛り上がると、チョコが。
「ゼウスじゃなくて?サタンって悪魔だけど。」と発言し。
一瞬空気が止まった後、3人でその日一番の大爆笑をした。
倫くんは、世界で一番優しい悪魔。
どんなゼウスよりも優しいサタンが
今宵は、きっと悪魔になる。