恋色流星群
 

planetのライブ、としか思ってなかったから。



『葵ちゃん、知ってる人いた~?』

「え、逆にあんた知らない人いたの?!」




今をときめく、J-POP界のヒーローたち。
たくさんのアーティストが入れ替わり立ち替わり、ステージに出てくる。
おかげで、静を知らず、ひたすら沸き続ける場内。


私は中盤の休憩時には、既に退屈を感じ初めていた。
普段テレビを見ないから、きっといま売れに売れてるんであろう、若いアイドルグループやソロの女の子にも。
全員が初対面で、全く胸がときめかない。


斜め前方の、花冠をつけた女の子たちのグループも。
隣にいる、葵ちゃんも。
みんなそれなりに盛り上がっているように見えたのに、私だけ置いて行かれてる感覚。





『名前は聞いたことあるなって思うんだけど、その後の歌と顔が一致しない。』

「ちょっと・・・しっかりしてよ、このライブ結構チケット手に入れるのも大変なのよ?
せっかくだから、楽しまないと。」

『うーん。ていうか、まだ出てこないのかな?』


「そろそろだと思うのよね。もう後半だし。」



大きく伸びをしたら。
ふわぁ、と。欠伸が出そうになった。

このライブが終わったら。
誰かに会いに行く、なんて自分で自分が信じられない。

ヨガのせいか、すっかり身体がリラックスして眠たいし。
家に帰って、あったかいベッドでレオンと寝ちゃいたい・・・。




『だめだ、ちょっとトイレ行ってくる。』

「え、これから?!
早く戻って来てね、もう始まるわよ!」




続々とそれぞれの座席に戻る人の波に逆らって、バッグを振り回し気味に化粧室を目指した。


少しでも体動かしとかないと。
気を抜いたら、次は寝ちゃいそう。




もう、誰もいないだろうと。
化粧室に下がる階段をリズミカルに降りて、そのままの勢いで角を曲がれば。









『きゃ!』

「わっ・・・!!」







思いっきり、出会い頭に衝突した。
吹っ飛んでいく、私のCHANELのトートと。
彼女の、猫柄の化粧ポーチ。




「ご、ごめんなさいっ!!」



慌てた様子で、何度も頭を下げる彼女は。
口が開いていたのか、大体に中身が散らばった自分のポーチよりも、私のトートに手を伸ばした。

栗色の髪の毛を揺らしながら、頭をペコペコさせて。
大した被害を起こしてない溢れたものをかき集める。
 

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