恋色流星群
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総立ちになって、通路まではみ出して飛び上がる人たちの脇を、すり抜ける。
地響きのような爆音と、奇声にも似た歓声に耳が痛い。
女の子たちの手から振り上がるフラッグが、今にも頭に降ってきそうで。
耳と頭を押さえながら、『ごめんなさい』を繰り返しながら席を目指した。
命からがらたどり着いた、スキンヘッドの大男の左隣。
何なの、さっきまでと明らかに違うこの異様なくらいの盛り上がり!
planetのステージ、始まっちゃったかな?と一瞬焦ったけど。
ステージには、知ってる顔は一つも居ない。
わりと若い子たちが、ステージから客席を煽ってる。
もう前を抜けるのも辛い。。
『葵ちゃん、奥詰めて!』
何度も肩を叩いて、叫んでるのに。
ガンとして、前を抜けて自分の席に入れと譲らない。
陽斗くんの用意した、灼熱の赤い席。
目を見開いて、そこをガシガシ指差しながら鬼の形相で私を見下ろす。めんどくせぇ・・・
ていうか、こんなに人が立ち上がってたらおチビな私。
ステージからなんて、絶対見えないよ。
『ねー、これplanetじゃないよね?』
背伸びして、耳打ちすると。
「あんたバカにしてんの?!どう見たって違うでしょうよ!!
これはStars!Starsよ、Stars!!」
すたーず?すたーずすたーず?
もうだめだ、ついていけない。
『どうでもいいから、そのフラッグもうちょっと下げて振ったほうがいいよ。
後ろの人に迷惑だよ!』
高らかに持ち上がる、ごんぶとの左腕を下げようと、ぶら下がったら。
「Starsが出たってことはね。」
『あ?!聞こえない!てかお茶ちょーだい!』