恋色流星群
 

これだけの距離で見上げれば、やっとレンズの奥の瞳を見つけた。





『航大がい、』


首にぶら下がった姿勢のまま。
航大がいい、と。
続こうとした告白は、浮き上がった体の感覚に遮られた。




あっという間に回転した身体は、気づけば簡単にメイク台に載せられていて。

壁際に追い詰められるのは、私の方。
目にも止まらぬ、形成逆転。




『、びっくりしっ・・・』


「手のかかるやつだな。」



大きな手が、頬を包んで。
親指が、目元を柔らかくなぞる。
同じ目線にある、強気な瞳には。

あまりの温かさが、溢れていて。

言葉は、喉の奥に引っ込んで。

張り詰めていた想いが。

堰を切って、溢れ出す。








「してやるよ。」







たった一瞬、音を立てて吸われた唇に。
座ってるのに、崩れ落ちそうなほどの、甘い目眩。







「俺しか見なくていい。」






また一瞬、吸われる唇。
濡れた音に、喉から燃える。






「俺だけ見てればいい。」






予想どおり、またもや押しつけられた一瞬の柔らかさを。
私はもう、無意識に唇を開いて追おうとする。




両親指に、顎を掬われて。

真正面から視線に閉じ込められる。




目の前にある、この全てに。

甘い溜息が込み上げる。












「_______________好きだ。」















言葉を超えた思いを、ぶつけるように。
こじ開けた唇から始まった、深い深い濃密。


始まった途端に熱い口内に。
簡単に理性を、取り上げられる。










響く、濡れた音の度に。

心と身体を繋げていたネジが、一本一本、外れていって。

唇から彼に飲み込まれて。
縁取る身体の線を、見失う。






止まることなく、注ぎ込まれてくるこの想いを、私はもう一滴も漏らしたくなくて。

ただひたすらに、唇を開いて彼を受け止める。














航大の携帯が、何度もカタカタと震えて。

私の身体が当たった何かが、大きな音を立ててメイク台から落下して。






それでも尚、途中焦れるようにサングラスを捨てて、さらに私を引き寄せた仕草に。

身体中を駆け巡る、彼の味に。


目の前にある何もかもに、夢中でしがみついて。
上がるばかりの熱に身を任せる。









好き。

誰よりも、今、航大が好き。








声が欲しい、肌が欲しい、この全部が欲しい。



舌の上で転がる、体温に。

1ミリも違わず、重なりたい。 


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