恋色流星群
 

うっすら視界を開けば、濡れた瞳と瞳が合って。


「・・・苦しい?」


鼻先をくっつけたままの、掠れた声に。

私は、最後のネジを捨てる。



『もっと。』



首を振って、ほんの一瞬、唇を啄めば。

その唇が離れきる前に、強く引き寄せられた後頭部。

割入ってくる動きに。
私は自分から、手を伸ばす。





どうしよう、この味に。

好きしか、浮かばない。




ついに、私は。

彼の手中に堕ちた。















頭上から聞こえてくる、航大の声に。

この場に似つかわしくなく、私はとろとろと眠たくなっていて。

この男、本当に頭を撫でるのが上手いんだよな。
後頭部を支える左手は、器用にその指先で髪を梳く。その絶妙な、速度。

空いた右手で、携帯を耳に当てる。

それにしても、この私の格好。
ダッコちゃん、みたい。






めくるめく、キスの最中。

いい加減、止まることなく震え出した携帯に。
小さな舌打ちで、手を伸ばした。

私は甘い余韻に、ぼうっとする頭。
濡れた口元のまま、身体を離そうとしたら。


「・・・もしもし。」


聞こえてきた声と同時に、ギュッと腕の中に閉じ込められて。


「_________分かってるよ、大丈夫。
そんな遅れねぇから。」


やっぱり、仕事の督促の電話だったか。
厚い胸に抱き寄せられたまま、彼の声を聞く。
手持ち無沙汰で大きな背中に両腕を回してみたら。

左耳に、鼓動。
右耳に、声。
辺り一面に、航大の香り。





なんだ?この感じ。



しあ、わせ・・・






「お前眠くなってんの?笑」


額に落ちてきた、キスで。
いつの間にか、航大を取り上げた電話が終わってたことを知る。


『うーん・・・眠いよ。朝、ヨガ行ったんだもん。
仕事でしょ?私も帰って寝るわ。』


髪に降るキスって。
こんなに、気持ちいいんだな。

「寝とけ寝とけ、俺遅くなるし。」

『・・・大変だね。悪いけど、今日は本当疲れたからもう話せないかも。
今週休みだから・・・まぁ、おいおい話そ。』

「俺も明日はオフ。一日一緒にいれるな♡」

『・・・お風呂入りたい、走って汗かいた。』

「何でも好きに使え。着替えも適当にいいから。」

『・・・レオンと寝よ、あの子あったかくて気持ちいいんだよね。』

「うちのベッドには上がらないかも。躾けたから。」



・・・だめだ。もう、無視できない。


『七瀬さん。』

「なに。」

『無理だよ?今日はそっち、行かないよ?』



顔を上げたら、すかさず唇を啄ばまれた。
 

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