恋色流星群
孫を見るような、溶けきった顔。
なのにこの男は、結局傲慢な美しさで。
私を簡単に、脅かすんだ。
「うちの風呂は泡が出るぞ♡」
私のツボも、抑えてて。
「欲しがってたあのシャネルのTシャツ、あれを理沙の部屋着にする?」
たわいもない、私の言葉をいつまでも覚えてて。
『・・・なんか、すっごい先が思いやられるんだけど______________』
ゆっくりとした、少し深めのキスで。
ささやかな抵抗は塞がれた。
片側だけ上げた口元と、細まる瞳に泣きぼくろ。
いつも何歩も先を行く、上手な仕草。
「初日くらい、言うこと聞いとけ。」
抱き寄せる、強い力に鳴く胸が悔しい。
掠れた声に、抵抗虚しく染まる頬が悔しい。
こんなに、大事だったことに。
今更気づいた、自分が悔しい。
ちっとも眠れないんですけど・・・。
一度家に帰ったら、「明日はオフ、一日一緒に」という航大の台詞が甦って。
念のため明日の監禁に備えられるよう、簡単なお泊り道具を揃えて。
クタクタな身体とレオンを連れて 、航大のマンションに向かった。
うちより何倍も、家賃の高そうな高級マンション。
前回とはだいぶ違う気持ちで、エントランスを潜り部屋を開ける。
他人事感の薄れた部屋。
予想通り冷蔵庫には水とビールだけで、途中コンビニに寄った自分を褒めた。
これで明日の朝、お味噌汁くらいは・・・。
予想外だったのは、レオンの興奮っぷり。
久しぶりの“自宅”が余程嬉しかったのか、狂ったように走り回って。
何度投げてやっても、フライング気味の猛ダッシュで蜂のぬいぐるみを咥えて戻って来る。
その相手だけでも大変なのに、そのうち次第に航大からの鬼電が始まって。
10分おきくらいに入る「今、何してんの?」に。
ついに、『逃げないから!仕事しろ!』と怒鳴って切った後。
やっとお風呂に入れる・・・と、脱衣所に向かうため立ち上がろうとすると。
“風呂、狭くねぇ?”
“二人用に引っ越すか?”
携帯の画面に浮き上がる、浮かれたLINEに。
私はもはや、泣きたくなった。
なのに、逃げ込んだ広いバスルームにはバブルバスだけじゃなくて。
えらく画質のいいテレビまで、ついてて。
どハマりした韓国ドラマもホームシアターさながら観れる、その充実っぷりに。
“ここでいいよ。”
ローズのシャワージェルから泡が立ち上がる頃には。
上がったらそう返信しよう、とあっさり転がされてしまった。