恋色流星群
聞き間違いでもおかしくない、小さなその呟きを。
理解するために、私は一瞬、正気を取り戻す。
その一瞬が捉えた、目の前の男の、満足そうな微笑みに。
目の前の“最愛”が、私で満ち足りているこの状況に。
悔しいことに、私の思考はそこで弾けた。
私が人間らしく、言葉を使って記憶してるのは、ただのそこまで。
だけど、これだけ言えるのは。
こんな、理性も知性もない場面でも、全てにおいて私を優先する、航大の姿に。
私はきっと、少し泣いた。
ベッドの枕を、少しずらして。
航大の脇と胸の間に、頭を入れて。
この絶妙な角度から見上げる朝焼けは、至極だった。
遠くの地平線が、珊瑚色から燃えていく。
刻一刻と、深い藍色は天上へ追いつめられて行って。
一つの夜が終わって、世界が新しく生まれ変わる様を。
頬に航大の腕の温かさを感じながら、息をつめて見ていた。
語彙がない自分が悲しい。
航大が起きたら、どんなに綺麗だったか教えてやりたいのに。
それにしても、よく寝るなぁ。
携帯が鳴っても、水のボトルを落としても、全然起きない。
まぁ、あれだけ張り切れば_________
急に熱くなった顔に焦って。
シャワーでも浴びてこようと、絡んだ4本の足から、そっと1本引き抜くと。
「・・・どこ行くんだよ・・・」
後ろから、大きな温かさに包まれた。
『シャワー浴びて来ようかなと思って。』
「まだ後でいいじゃん・・・。」
背中から感じる、滑らかな肌の感触が。
否応無しに、胸を鳴かせる。
段々と丁寧になっていく、うなじへのキスに。
身体を撫で始める、熱い手の平に。
『・・・だめ、もうしないからね。』
「ええ~・・・あと一回だけ。」
『やだってば、さっきもそう言ったじゃん!』
「でも、してよかったろ。」
後ろから囁かれる甘く煮えた声に、ギュッと身を竦める。
ふと。
“聞きたい”と、思った。
どうした、私。汗
早速色ボケかと、自分に焦る。
肩越しに振り返る。澄んだ瞳と目が合う。
「なに。」
女子なら、やっぱり。
聞きたいタイミングって、あるよね。
『・・・。』
あれだけの深さを見せつけられ、といて。
まだ欲しがる?って、感じだけど。
「・・・何、考えてんの。」
黙った私の、頭のてっぺんにキスを落とす。
私はますます、唇を噛んで身体を固くする。
こんなダサいこと聞きたくないのに。
今にも唇から溢れそう。
「こっち向いて。」
サラリ、と。
回転させられた身体のせいで、同じ目線で目が合った。
圧倒的な力の差は、こんなふとした瞬間に思い知るんだ。
「理沙?」
甘い眼差し。前髪をはらう指先が擽ったい。
この、距離。こっちだって無遠慮に見入る。
眉頭から、鼻筋。睫毛もなが、
「ああ、そっか。」
『は?』
「俺も好きだよ♡」
『はぁ?!』