恋色流星群
20#航大side
打ち上げの一次会に、やはり陽斗チームは現れなくて。
暗黙の了解で、到着を待ちながらの二次会が始まっていた。
みんな、すげぇいい顔。
一人違わず同じ達成感を共有するこの時間が、何よりも幸せだ。
今回の曲を渡されたときに感じた興奮は、今もなお冷めない。
初めての海外でのPV撮影だったけど。
スタッフ含め全員が能力を出し尽くして、最高のものができたと思う。
あとは、これまた最高のスタッフに編集を委ねるだけ。
そして、また戻ってきたバトンを受け取るように。俺たちのプロモーションが始まるんだ。
行ける。
この曲で、俺たちは確実に次のステージへ行ける。
今なら、何だってどうにだってできる気がする。
言葉にならない、湧き上がる達成感と興奮を体中に感じていたら。
やはり、浮かんでくるのは彼女の名前。
場所も時間も選ばず、当たり前のように俺の中に現れる。
いい加減、どうにかしないと。
彼女を想うために、俺はただただ裏切ったあの人からの罰を受ける。
いつまで
どこまで
「航さん。」
他のメンバーの席で騒いでいたチョコが、いつの間にか隣に来ていた。
「・・・おー。びっくりした。笑」
自分から寄ってきたくせに、手元のビールグラスをじっと見つめて黙る。
何か決心したように、子犬のような顔を上げた。
チ「あと何時間後にかは分かることだから言うけど。」
「は?」
チ「理沙子が、来てるんだ。」
「・・・は?」
チ「陽斗さんの相手役の女優、理沙子なんだよ。」
思考が、完全に、止まる。
チ「昨日、俺も偶然地下のジムのとこで会ったんだ。昨日、ハワイに到着したらしい。
スカウトしたのは直生さんで、瀬名さんも一緒に理沙子に口止めしてたって。
俺も知ってたのに、言わないでごめん。」
チョコの声は夢みたいに響いて。
ばかみたいに混乱する俺の脳内は、流れてくる言葉を処理できない。
「・・・謝ることじゃないっしょ。」
やっと出た言葉は、誰がどう聞いても上っ面の強がりで。
理沙子が来ている。
今、陽斗といる。
猛烈な息苦しさが襲ってきて。
俺は
唇を固く結ぶチョコに、それ以上何も答えられなかった。
きっと、チョコも分かっている。
陽斗は
既に堕ちている。